山に登らない山岳部
僕の父は、1992年の8月19日に亡くなった。今年でちょうど10年になる。彼は純粋で熱心なロッククライマーだった。山岳会に所属し、10代から20代の中盤にかけては毎週のように土曜日の夜行列車で谷川岳の一の倉に通うような男だった。
僕は、物心がついたころから周りにザイルやピッケルやハーケンがゴロゴロしている環境で育っている。当然のように登山に興味を持ち、読書ができる年齢になると毎日のように図書館で借りてきた登山家の伝記を読みあさるようになっていった。
幼心に男のロマンを鮮烈に感じて小さな胸を熱くしていた。
ある日のこと、そういう僕に父は言った。
「お前は、大人になっても山には行かせない。」
「なんで。」
「お前のような性格では必ず山で死ぬ。」
「・・・・・・・。」
父は僕より10倍はオッチョコチョイだったと思う。そういう父でも生きているのだから僕は大丈夫だと言いたかった。でも言わなかった。父の顔に「お前には山で死んで欲しくないんだ。」という気持ちが強く表れていたからだ。
そして僕は、ロッククライミングを諦めた。
小学校5年生の頃だと記憶している。
「山に登らない山岳部」。
そのタイトルを見た時に、父とのやりとりを思い出した。
僕は今、FlyFishingを楽しんでいる。そして家族には言えないが、大きな岩を攀じ登るような危ない溪が好きだ。
そういう時、心の中で父に言うのだ。
「親父、これはクライミングじゃないって。」(笑)





























